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研究ノートs4:錬法としての<かいな返し>

 「かいな」とは腕の古い言い方で、上腕から手までのことを言います。「かいなを返す」という表現は相撲の技法にあり、フリー百科事典『ウィキペディア』には、次のようにあります。

《腕(かいな)をかえすとは、相撲技術の1つである。相手の腕の下に自分の手を差し入れた場合(差し手と言う)と投げを打つ時に、その腕の小指側を上げる事である。おっつけの逆である。相手の腕を持ち上げ、脇を開けさせ、重心を高くする効果がある。》

 当会では<かいな返し>を、体幹部を使って末端部、具体的には肩を含む腕全体を動かす身体操法として研究稽古しておりました。
 その後、研究が進みまして、『合気道技法のすべての設定(攻撃)はこの<かいな返し>という身体操作で対応できることが確認できました』(研究ノートa4:設定と<合気>について)と、まとめることができるようになりましたが、今現在でもこの技法の本質は、体幹部を使って末端部を操作する、というところにあると思います。

 <合気>は武田惣角が発見したとも、会津藩に密かに伝わっていた技法を伝承したとも言われておりますが、私自身はこの相撲の「腕を返す」をもとに武田惣角が発展させたのではないか、と空想しております。惣角の父は相撲の名人であったことが知られております。また、秘密主義の大東流のなかにあって、広く技を公開している「六方会」の中心技法と思われる「掌の返し」は、<かいな返し>の掌を縦回転に変えたものと思われます。

 当会では<かいな返し>としてその技法を分離して研究稽古いたしましたが、この所作は相撲ばかりでなく、他の伝統芸能の動きのなかにもみることができ、また繰り返しになりますが、合気道技法に融合されていることは言うまでもありません。
 何回かに分けて、<かいな返し>に関する当会の考えを述べますが、ここでは、甲野先生の仙台稽古会で指導していただいた手順のポイントをのべます。ただし、その所作の要点や注意点は当会の意見です。

  動作としては、両の手の平を上にして、指を胸の前で組み、その組んだ両手を回転させながら頭頂までもってゆき、そこで組んだ両手を離し、体側にそって手の平を外に向けながらおろしてゆく、というものです。
 この一連の動作で厳に慎むべきは、腕の筋力だけで、腕または指先をクルクルと廻すことです。これは何の意味もありません。
 何度も述べてきましたように、人間にとって末端は動かしやすいのですから、末端を末端の筋肉で働かせるのではなく、指先や掌など末端を体幹部が起こす働きによって動作させるのが、この稽古の目的です。
 こののことを具体的に<かいな返し>の手順に即して述べますと、
1.指を組む
 指を軽く胸に固定し、先に動かないようにする
2.〈正中線〉を流す
3.背中全体が働き
4.両肩が沈む
5.両腕の「二の腕」の裏の筋肉が伸びる
6.組んだ指が回転し上がる
7.頭頂に達したら、両体側が働き
8.組んだ両手が離れ、体側にそっておりる

 以上のようになりますが、いずれの動作も体幹部が働いてから、その働きによって掌や指先の末端部が動いているということに注意してください。

 またこの〈腕返し〉のなかには、〈肩の溶かし込み〉、〈肩のアソビをとる〉などの要素も含まれております。4.5の部分がそれにあたります。
 逆にいうと、〈肩の溶かし込み〉、〈肩のアソビをとる〉などの身体操作は、1.2.3の過程を経ればできるということです。
 最後に細かな注意を付け加えますと、錬法としては、両指を組むために肘を曲げておりますが、個々の技への具体的な応用の場合、どの技でも肘を曲げないことが肝要です。どうしても曲げざるをえないときでも、肘は直角には曲げずにできるだけ柔らかな曲線になるように工夫すべきです。
 
平成21年1月24日


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