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研究ノートs3:沈身・<浮き>について

当会では、武術的に効果的な沈身と〈浮き〉を同じ技法ととらえております。
 効果的な沈身は、足の身体を支える機能を消すことで得られます。その瞬間は身体は何物にも支えられておりませんので、それは〈浮いている〉とも言えます。
 簡単に考えれば、飛び上がれば、その結果の落下が同じ状態を作り出すようにも見えますが、飛び上がるという大きな予備動作によっていますので、武術的に使える〈浮き〉とはいえません。同じように、普通に行われる腰を沈める動作も足が身体を支えながら行っている限り、足を含めた身体全体が沈んでいるとは言えませんので、効果的な沈身ではありません。
 〈浮き〉とよべる状態は、効果的な沈身(落下)と、もうひとつ、たぶん深層筋を伸筋として使うことによって身体内部に発生する〈浮き〉の二つがあると考えられます。  ここでは、前者の沈身・〈浮き〉について述べます。

 先に〈倒れる〉の技法のところで述べましたように、上体を落下させるように操作すると大きな効果がありますが、ここで述べたいことは、人体の最下部である足を操作することによって、上体のみならず全身を落下させるように使うということです。
 潜龍会の現在の目標は、全身の支点を消すように動くことですが、足はどうしても残ってしまう最後の支点です。なかなか消すことは困難です。なぜなら支点としての足をなくしてしまうということは、本当の意味で倒れてしまうことを意味するからです。肩の支点を消しても人間は倒れません。だから安心してその操作に専念することができます。しかし、足はそうはいきません。支点としての足を消そうとしたとたん、人は倒れます。ここにこの技法の難しさがあります。
 そもそも人間の自然な発想に、支点としての足をとる、などというものはないのです。安全に立っていたいからです。安全に立っているからこそ様々な身体動作が可能なのです。この人間の生活の大前提に反する身体動作をおこなうことは大変困難です。脳の構造を変えることといっても言い過ぎではないでしょう。
 民弥流居合の黒田鉄山先生のところに伝わる言葉に「無足」があります。甲野先生の「水鳥の足」にあたります。「無足」とはその名のとおり、足が無きがごとく、自分の体重を支えないように、足の力を抜くことです。しかし、この技法を試みるとき、人は例外なく、膝から上の力を抜きます。足裏はしっかり床についたままです。これはしゃがんでいるのです。技法として有効な沈身にも〈浮き〉にもなりません。
 「無足」になるためには、腰に近い方から力が抜けるのではなく、床に近い方から力が抜ける必要があります。
 その意味では、まず〈足の裏〉の身体意識を持つのがよいと思います。足が床を踏んでいるその感覚ですから難しくありません。何の感覚ももたずにベタ足で立っているのと、〈足の裏〉の感覚がある身体では、接してきた相手にまったく違った感じを与えます。〈足の裏〉の感覚をもっていると触れてきた相手はなんとなく不安定な感じをもちます。
 〈足の裏〉の感覚を持ちつつ、床に近い方から力を抜いてゆくことで、有効な沈身や〈浮き〉が得られます。ただ、身体操作としては、上体の各部、例えば腕などの力を抜く場合とが逆の操作順になります。
 当会で研究している身体操作は、ほとんど体幹部に近い方から力を抜き、末端は後になりますが、足の場合は、いわば末端から先に力を抜くことになります。また、腕などの場合、末端ほど力を抜くのが容易なのに、足の場合は(とくに立っているとき)末端ほど力を抜きにくいのです。理由はさきに述べたとおり、倒れるからです。または倒れると恐れるからです。
 抜き方を稽古すれば倒れることはないのですが、しかし意識はなかなか思ったとおりにはなりません。ここをこえるには、自分の意識が変わるまで注意深く稽古を重ねるほかないと思います。
 足の力を抜く稽古では、抜く速度が非常に重要です。
 足の力を抜けば上半身は沈んできますが、足をそのままの速度で脱力していれば、結局は足は上体を支えていますから、「無足」や〈浮き〉にはなりません。足が床から離れる必要はありませんが、最低、上体の沈む速度より早く脱力する必要はあります。上体の落下速度より足が力を失う速度が速ければ、足は上体を支えていないのですから「無足」となり、また上体はなににも支えられていないのですから〈浮き〉となります。
 このことを実現するためには、脚の筋肉を伸筋状態にするのがよいと思います。伸筋にすると身体意識が高まり。操作性が増すように思います。そして、上半身は〈割って〉、〈流している〉と効果的です。〈割る〉〈流す〉という操作自体が吊りや〈浮き〉の効果を持つからです。また上半身の落下速度はこの〈割った〉〈流れ〉の速度で検出すると微妙なところまで操作することができます。
 この身体操作を修得した人ならわかることですが、体が〈流れ〉を追い越しては有効な技になりませんから、体の落下速度は〈流れ〉を追うような速度にしなければなりません。そういう意味でも体の落下速度の検出には〈流れ〉を使うべきです。


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